top of page

研究

田宗 秀隆

研究の概要

私のモットーは「全ての人に標準的こころのケアを。全ての精神疾患当事者に標準的内科診療を」です。
このためには、多疾患併存(multi-morbidity)に対して総合的に取り組むことが必要です。
まず、他の内科等と同じように精神疾患を捉える、生物学的精神医学での研究が不可欠です(研究テーマ1)。
しかし特に精神科領域では、研究成果が臨床現場に還元されるには長い時間がかかります。そのため、基礎研究と臨床実践の橋渡し/医療現場のバリアをクリアにする研究も必要です(研究テーマ2)。
また、研究成果をいち早く患者さんのもとに届けるために、医療者がどのように生涯学習を進めることができるかを考えながら、日々試行錯誤しています(研究テーマ3)。

リエゾンチーム_Website用-7.png

研究内容

1. 精神疾患発症の遺伝的ハイリスクの患者さん由来iPS細胞を用いた研究

精神疾患は、遺伝的な素因と環境的なストレスが相互作用して発症すると考えられています。そこで、精神疾患の遺伝的ハイリスクである患者さんから血液等をご提供いただき、ヒトiPS細胞を樹立してヒト神経細胞を作成してさまざまな研究を行うことで、遺伝因と環境因、そしてその交互作用を切り分けることができるのではないかと考えています。

ヒト神経細胞の形態・機能、神経細胞同士のネットワークなどが時間とともにどのように変化していくか、薬への反応はどうかなどを調べるために、ヒトiPS細胞は非常に有用なツールとなります。

特に私たちはミトコンドリアに着目した創薬基盤の構築を目指しています。現在は臨床的な症状の種類や期間の組み合わせによって精神疾患が分類されていますが、発展的には、疾患横断的に診断法・治療法の開発を進め、従来とは異なる新たな類型(タイプ)を提唱し、個別化医療につなげていきたいです。

2. 基礎研究と臨床実践の橋渡し/医療現場のバリアをクリアにする研究

テーマ1のiPS細胞を用いた研究は「医学モデル」ですが、特に精神障害は、個人と社会とのあいだで機能的な障害が顕在化します。障害は社会の側に起因するという考え方を「社会モデル」と呼びます。

 

これからの研究において、研究者が患者・市民の知見を参考にすること(研究への患者・市民参画:Patient and Public Involvement, PPI)が大切です。そこで、難病である22q11.2欠失症候群のある患者の養育者100名以上にアンケートを行い、以下を明らかにしてきました。

- 養育者によって、重要と考える研究は様々である

- 病態解明・原因解明の研究は多くの養育者が必要と考えている

- これまで着目されてこなかったが、養育者は当事者の発達・心理社会的な側面や、医療・福祉・教育領域の連携の研究を重要と考えている

 

当事者や家族が必要とする知識や相談場所および支援が適切に提供されるためには、多疾患併存(multi-morbidity)に配慮した患者中心のケアシステムを作る必要があります。

また、医療現場において障害のある医療者の参加を暗黙の障壁が阻んでいることも指摘されつつあり、日本における現状を多施設共同研究しています。

これらを通じて、基礎研究と臨床実践を橋渡しし、医療現場のバリアをクリアにしていきたいです。

3. 精神科医療のプライマリケアへの統合/医療提供者の効果的な生涯教育

研究成果は患者・家族のもとへ届いてこそ価値があります。WHOは<精神科医療をプライマリケアに統合することが精神的健康問題に対する最も実行可能で重要な戦略>と位置づけていますが、日本の現状はその理想には程遠いと言わざるを得ません。
そこで私たちは、全ての医師が精神科診療を体系的に学ぶ臨床研修期間に着目しています。
臨床研修医の過半数が受験する全国試験(基本的臨床能力評価試験:GM-ITE)を用いて、臨床研修医への精神科教育の現状の詳細な把握、教育効果の量的な測定をすすめていき、精神科教育を最適化する提言をしていきたいと考えています。この取り組みを通じて、全診療科の医師の精神的ケアへの配慮が向上することを期待しています。
また、精神科リエゾンチームでの臨床実践では、身体的な疾患での入院時に看護師による精神医学的アセスメントで精神科的リスクを層別化し、短い入院期間で効果的に治療を行えるようにする取り組みも行っています。これらにより、医療提供者の生涯教育を促進していきたいです。

研究者紹介

田宗秀隆先生.JPG

准教授

田宗 秀隆(たむね ひでたか)

[順天堂医院:メンタルクリニック]

研究の詳細

https://researchmap.jp/tamune-tky

bottom of page