研究

西岡 将基

研究内容

1. 精神疾患ゲノム解析:ゲノム情報に基づく精神疾患概念の再構築とゲノム精神医療の実現に向けて

双極性障害をはじめとする精神疾患は、一卵性双生児の診断一致率が高くゲノム情報が発症に大きく関与すると考えられています。ゲノム情報は身体や精神の特徴を生み出す基礎的な情報ですが、双極性障害や統合失調症といった精神疾患に大きく関与する要素(遺伝子や個別の変異)を見出し、治療法の開発の基礎となる病態を理解することが目的です。「双極性障害」と呼ばれるカテゴリーを中心として研究を進めていますが、多くの患者さん・臨床家が常々感じている通り、現在の精神疾患/精神障害の分類というのは確定的なものではありません。診断から治療へとより明瞭に対応させるためには、従来の診断を起点としつつも、ゲノム情報から疾患概念を再定義していく必要があると思います。22q11.2微小欠失症候群という先例がありますが、ゲノム特徴から定義される疾患概念・症候群が他にも潜在していると考えます。ゲノム特徴から臨床表現型を見直し、身体症状・合併症も含めて包括的に臨床表現型を理解することで、新たな疾患概念を見出したいと研究を進めています。ゲノム特徴に基づく疾患概念・症候群によって、ゲノム診断が精神医療に実装されつつ、分子病態の理解から新たな治療戦略が生まれると展望します。

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2. 精神疾患に対する体細胞変異の寄与

近年の研究によりヒトの個体の発生・発達の過程で、多くの体細胞変異が生じていることが明らかになってきました。1つの神経細胞には数千個の変異が蓄積されており、それぞれの細胞のゲノム情報は完全には同一ではなくそれぞれに個性があると考えられています。このような体細胞性の変異が精神疾患に寄与する度合いには未知が多いものの、精神疾患に寄与している可能性があるというデータが提出されています。これまで「遺伝因子」というと、生殖系列として伝達される多型・変異としての先天的なゲノム情報を指し、それ以外の後天的な要素は「環境因子」として括られて理解されることが一般的でした。しかし、生殖系列としての遺伝因子や環境因子とされるものだけでは精神疾患の発症を十分に説明できてはおらず、後天的に生じる体細胞変異が精神疾患に寄与している可能性も十分に高いと考えます。体細胞変異と精神疾患との関連を調べ、テーマ1と合わせてゲノムという視点から精神疾患の発症メカニズムを包括的に理解することで、病態メカニズムからの新たな治療戦略創出に貢献したいと考えています。

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3.ヒト死後脳の単一細胞核解析

精神疾患の主な病態は脳にあると考えられていますが、脳の生物学的メカニズムを直接調べる手段は大きく限られています。精神疾患は原因となる脳部位や神経病理が定まらないことが大多数であり、光学顕微鏡の解像度未満のより細かい分子病態を調べる必要があります。この数年で一細胞ごとのRNA発現状態やクロマチン状態の解析を行う技術が成熟し、ヒト死後脳などの難しい試料に対して応用することが現実のものとなってきました。一細胞ごとの「個性」を調べ、細胞種単位での特徴や精神疾患で特に機能が障害されている細胞種を見出すといったことができるようになったのです。ヒトの脳神経系を構成する細胞種はまだまだ未知が多く、どのような細胞種が脳神経系を構成しているか、脳部位によってどのような違いがあるかなど、調べるべきことが多く残されています。精神疾患において障害されている分子病態の理解を目標とし、脳部位ごとの細胞種分類など基礎的な解析を含めて研究を進めたいと考えています。

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研究者紹介

順天堂大学医学部 精神医学講座(メンタルクリニック) 准教授  西岡 将基

准教授

西岡 将基(にしおか まさき)

[順天堂医院:メンタルクリニック]

研究の詳細

https://researchmap.jp/masaki_nishioka