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研究
八田 耕太郎
研究の概要
臨床現場においてEBMの実践が推奨され、二重盲検ランダム化比較試験に基づくガイドラインに添って診療することが最良とされている。しかし、そのような試験の組み入れ基準に合致する患者は、例えば統合失調症であれば全体の5%程度である。それをもって臨床全体を統制し ようとすれば、現場は困難に陥る。そのような現場の薬物療法に関する矛盾を研究対象とし、現場を守るのが私の統括している日本精神科救急学会のJAST study groupの背景であり、存在意義である。2007年から活動開始し、15年目になる。
この多機関共同研究で培った手段を、高齢人口の増加に伴い一般病院で大きな関心事になっているせん妄の研究に適用したのが日本総合病院精神医学会のDELIRIA-Jである。2011年から活動を始めて11年目になる。特にせん妄に伴う睡眠覚醒サイクル障害の回復・維持の視点から、メラトニンおよびオレキシン神経伝達に介入してせん妄予防を薬理学的に実現する領域で成果を上げている。
研究内容
1. 統合失調症急性期薬物療法-エビデンスvs.現場感覚vs.リアルワールドエビデンス
精神科救急医療機関による多機関共同のRCTおよび前向き観察研究を実施し、精神科救急医療ガイドラインの薬物療法の部を更新している。最近は精神科救急コホートの追跡を行っている。

2. メラトニン・オレキシン神経伝達を視点にした時間薬理学的なせん妄予防と発症予測研究
総合病院精神科による多機関共同のRCTおよび前向き観察研究を実施し、メラトニン受容体作動薬およびオレキシン受容体拮抗薬によるせん妄予防効果を世界に先駆けて実証した。成果を踏まえて日本総合病院精神医学会のせん妄の臨床指針を更新している。
